江戸期から残る
茅葺屋根の住まい
間取りも性能も現代的に
リフレッシュ

写真=

滋賀県蒲郡Y様邸

規  模:木造1階建て
設計:江角アトリエ 施工:有限会社ネヌケン

傷みが進んでいた古民家に手を入れ
ゆとりのある住まいと暮らしを実現。
古い建物の面影を一部残しながら
最新の設備や断熱性能などを取り入れ、
機能性を備えた家に生まれ変わりました。

祖父母が所有していた古民家を
リフォームして現代的な住まいに

祖父母が所有していた江戸期の茅葺き屋根の古民家は、老朽化が進み、天井裏にはアライグマが住み着くほど荒れていました。何度もくり返した増改築によって室内は風通しが悪くなっており、暗い雰囲気に。建て替えをしようかと検討していましたが、歴史の詰まった建物を解体することに踏み切れず、なんとか直して住んでみたいとリフォームをお願いできる方を探していました。

インターネットを駆使してたどり着いたのが、古民家再生に力を注ぐ設計事務所「江角アトリエ」。リフォーム物件があるのが滋賀県、「江角アトリエ」は島根県と遠方にはなりますが、古民家に詳しく、丁寧な説明に信頼感を覚え、迷わず依頼を決めました。施工は同じく古民家リフォームの実績が豊富、技術力のある地元工務店「ネヌケン」にお願いしました。

古民家の面影を残しつつ
耐震壁と断熱材で快適な住まいに

リフォームを本格的にスタートする前に、建物を綿密に調査していただきました。結果、屋根が既に落ちてしまっていた蔵や、腐食が激しい西の増築部は解体することに。石場建ての母屋のみを残してリフォームすることになりました。

構造のゆがみを補正し、母屋の外周は筋交いの入った耐震壁で補強。リフォームで建物全体の強度を向上させています。また、外壁、屋根、床下にはしっかりと断熱材も入れてもらったので、建物は古くても、快適に過ごせる住環境を確保しました。

茅葺きの屋根は金属の重ね葺きに変更。趣のある窓枠や格子戸は、既存の建材をできるだけ再利用しています。外壁は矢板張り仕上げにして、古民家らしい佇まいを残しました。鬱蒼と繁っていた周囲の竹林を伐採したことで、外観もすっきりとした表情になりました。

昔ながらの田の字型の間取り
2室は和室のまま、2室をフローリングに

リフォーム前の間取りは、和室が4室並んだ昔ながらの田の字型。南側の2間はい草の香りが漂う和室としてリフレッシュさせました。日当たり抜群のこの2間は、障子や板壁など既存の建具もできるだけ生かし、心休まる和のしつらえに。昔の面影を残すことを心がけました。

キッチンに近い北側の2間については、フローリングに改修。このスペースは、新たに掘りごたつ式の囲炉裏も設けて、食事もできるリビングとして活用し、家族の憩いの場となっています。囲炉裏を使わない季節には、座卓を置いて食卓に。大人数が集ってもフレキシブルに対応できる空間です。

古民家としての風情を残してリフォームを行いましたが、機能を優先させたいトイレや浴室には、新しい設備を導入。心地よく暮らすための機能性もしっかり実現しています。

土間のあるキッチンは
内でもあり、外でもある空間

暮らしの中心となるキッチンには、勾配屋根にトップライトを設置。明るい自然光を取り込むことで、古民家らしい陰影を残しつつ、気持ちのよい空間となりました。既存の土間は傷みが激しかったため、新たに土間に改修し直しています。土間のあるキッチンは、外と内とをつなぐ空間でもあります。薪ストーブのための薪の保管場所や、子どもの遊び場としても活用しています。

キッチンは壁付に配置し、アイアン×コンクリートの作業カウンターをプラス。ゆったりと作業できる、ゆとりのあるキッチンです。キッチン前の腰高窓からも光がさし込み、使い勝手のよいスペースに。タイル仕上げの壁で、わが家らしいアクセントをプラスしました。

このキッチンの見どころは、天井に走るどっしりとした古材の梁。当時の大工が逆さ使用したものをそのまま生かし、古い家ならではの風情を楽しんでいます。

夫婦で家づくりに参加して
古民家への理解と愛情が深まる

玄関土間は比較的状態がよかったため、既存の腰板や柱を残し、往年の面影が感じられるスペースにしています。高い天井には断熱材を入れ、床をモルタル塗りに。壁は下塗りに加えて珪藻土で仕上げ、古民家らしい趣を再現しました。

歴史を受け継ぐ古民家は、私たちが小まめに修繕し、さらに下の世代へと引き継ぐ必要があります。今回の家づくりにも夫婦で積極的に参加させてもらい、内部の解体や床塗装の作業にも加わりました。施主参加を快く受け入れてもらえたのも、ありがたかったですね。

リフォームをしながら内部の構造を実際に目にすることで、古民家への理解と愛情も深まった気がします。「家をつくってもらった」というより、「暮らしをつくってもらった」気がしますね。施主と設計家、工務店の連携で100年後に残せる家が完成し、仕上がりにとても満足しています。

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