規 模:木造2階建て
設計・施工:株式会社暮らしの工房
ソファに腰掛けると美しい眺望が広がり
季節の変化を感じながら暮らせる住まい。
恵まれた敷地環境を暮らしに取り入れ
緑あふれる夏の時期はもちろん
寒さの厳しい季節も楽しく過ごせます。
私たち夫婦が選んだ土地は、周辺に古い寺社仏閣が点在する、歴史情緒あふれるエリアにあります。
眺望抜群のこの土地を見つけたとき、真っ先にイメージしたのが「自然と一体化した住まい」。眺望を生かした家づくりには、設計度の自由度が高く、住まい手の要望に寄り添ってくれる工務店を選ぶのが近道です。建物の外構は、周囲の土地柄を考慮して、経年で深みのある色合いに変わる無塗装のスギ板をセレクト。また、周辺に点在する農器具小屋などの風情を壊さないよう、昔ながらの家の形状を踏襲した切妻屋根を採用しました。敷地条件をしっかりと見極めて、家の形から間取り、窓の配置まで細かく計算。その結果、ふと外に目を向けるとすぐに庭木や空が見えるような暮らしを実現できました。
家づくりでいちばんこだわったのが、窓の向こうに広がる美しい池の景色を、暮らしのなかにどう切り取るかという点です。
まず、ソファからの目線と、池全体を見渡す絶好のロケーションである2階の窓からの目線を合わせて、「2つの軸」を設定。この2つの軸線に合わせて建物に角度をつけ、不整形な敷地にもなじむように配置しています。
さらに、家の中心となるリビングから池の奥まで見渡すことができるよう、ソファの配置と向きを細かく設定しました。窓枠を隠してノイズをなくし、ソファに座ったときに景観が目に飛び込んでくるようなデザインに。断熱性能にも配慮し、大きな窓にはトリプルガラス「エルスターX」(LIXIL)を採用しています。窓辺でも心地よく、ソファまわりが家族の憩いの空間となりました。
このエリアは雪が多いため、冬は気持ちが暗くなりがち。そんな時期を楽しく過ごすために、リビングの床レベルを30cm下げてもらいました。積もった雪を窓ガラス越しに眺められるので、子どもたちは大喜び。逆転の発想で、積雪を楽しんでいます。
また、室内をより快適にするために、建物の断熱性能にもこだわりました。断熱材や窓の性能を厳選して、建物性能をアップ。夏は天井裏に設けたエアコンの冷気が吹き抜けを通して家じゅうを冷やしてくれるので、どこにいても気持ちよく過ごせます。寒さの厳しいLDKには、薪ストーブを設置。ストーブの暖気が2階まで温めてくれるので、家じゅうぽかぽかです。この吹き抜けは、開口部を減らすことで雪のかまくらをイメージしており、反射する光のゆらぎを眺めていると、ゆったりといやされます。
また、家でくつろぐ仕かけとして、内装にも十分こだわっています。
LDKは無垢の床材や漆喰などの自然素材をセレクト。窓からの眺め、薪ストーブなどと併せて、ほっとくつろげるスペースとなりました。窓の配置を入念に計画したため、夏は南北の窓からさやわかな風が通り抜け、冬は南から心地よい自然光がさし込む空間に。ダイニングスペースの天井から吊るしたペンダントライトも、ぬくもりを感じさせます。
キッチンとリビングダイニング、またピアノを置いたライブラリーまでひと続きにしていますが、場所ごとに床のレベルや天井の高さを変えているので、どのスペースも心地よい空間となりました。奥まったスペースにあるキッチンは視線も気にならず、調理に集中することができます。
1階にはリビングダイニングやキッチンなど、家族が長い時間を過ごすスペースを集約。2階に個室や水まわりをまとめました。2階に設けたランドリースペースは、洗濯後に干す、畳む、片づけるが1カ所でできるので、毎日の家事がスムーズです。
2階に配置した主寝室からは、クロゼットや浴室、洗濯室に直接アクセスできるので、仕事から帰宅した後の時間が快適に。家事がしやすく、時短にもつながりました。
また2階には、4.5畳の子ども室を2部屋配置。各室はコンパクトでも、間に和室を挟んだことで、引き戸を閉めて独立させたり、2室とも開放させて広く使ったりと、自在に変化できる空間となりました。和室の窓からは、池全体を見渡すことができる抜群の眺望が広がります。夏になると強い西日がこの窓からさし込むため、簾をかけるために手すりを兼ねた木枠も設置。さらに風情ある眺めとなりました。
天井から吊るしたペンダントライトがぬくもりを感じさせます。無垢の床材、漆喰などの自然素材がほっとくつろげる空間を演出しています。
リビングダイニングの一角に設けたライブラリー。ピアノや読書など、多用途に使うことができます。
2階に設けた設けたデスクスペース。吹き抜けを通して、1階にいる家族の存在を感じながら作業ができます。
造作のキッチンは、Ⅱ型のレイアウトにしました。ダイニングへ横移動で動ける位置に配置しています。「冷蔵庫や戸棚へすぐに手が届くので使いやすい。配膳や片づけ作業もラクです」
和室を挟んだ2つの子ども部屋は、引き戸を閉めると独立した空間に。和室には「イサムノグチ」の照明を採用。窓は夏に西日を遮る簾をかけるため、手すりを兼ねた木枠を設置しています。
道路との高低差を生かしてつくった円形のアプローチ。建物外観に柔らかな印象を与えてくれます。大開口は引き込みとして、家のなかから外の景色を楽しむことができるようにしました。
※この記事は個人の感想に基づいて制作しております。
写真:渡辺慎一