敷地環境の課題を克服
地域の風土をよく知る
工務店の家

写真=

岐阜県養老郡養老町O様邸

規 模:木造2階建て
設 計:株式会社大橋利紀建築設計室
施 工:Livearthリヴアース

敷地は広いながらも採光や通風が限られており、
希望の開放感あふれる家づくりが難しい環境。
この地域の風土をよく知る工務店に依頼して、
採光と通風を十分に確保した
光の陰影を感じられる住まいをつくりました。

パッシブデザインを利用した
光と風を感じられる住まいを依頼

太陽の光や熱、風などの自然の力をうまく取り入れたパッシブデザイン住宅に以前から興味がありました。

家づくりを考え始めた時も、パッシブデザインの設計・施工力がある地元工務店「Livearth」へ依頼。地元の風土や気候に精通していたので、高いレベルで理想の住まいになるのではないかと思ったのが、依頼の決め手です。仕上げ材にも地域性や伝統芸法を取り入れつつ、ノスタルジックな風合いに終始しない合理性や、居間の暮らしにフィットする利便性を備えた木造住宅を依頼しました。

敷地は十分な広さがありましたが、南から西にかけて隣家や倉庫が建ち、道路に面した東からしか主要な採光を確保できないという課題がありました。冬は敷地の大半が日陰となり、採光が難しい環境。この課題をクリアして、光と風、冬期の日射熱を取り入れた快適な住まいにすることが、プランニングのポイントでした。

視線が抜ける南側に開口を設け
DKとリビングを展開

「Livearth」が提案したのは、敷地の東西にそれぞれ自宅棟と事務所棟を配した住まい。自宅棟では、開放感とプライバシーを確保しつつ、自然の光と風を最大限取り入れるために、わずかに視線が抜ける南側を基点にしています。南面にコーナー窓と吹抜けを配し、スタディコーナーのあるダイニングからキッチン、畳リビング、畳の小部屋を展開。3方向に配した庭へと自然に視界が広げるようなプランが特徴です。

内装材では、自然素材と伝統の技を積極的に採用。1階はワンフロアの中で床材や床レベルを変えることで、それぞれのスペースの用途を明確にしています。さらに、焼きスギや左官の伝統技法であるかき落とし、意匠性の高い殴り加工などをセレクト。窓からの光が室内に陰影を紡ぐ度に、各建材の美しい素材感が際立ちます。

床の素材とレベルに変化をつけて
仕切りのない空間にメリハリをプラス

1階はキッチンとダイニング、リビングが連続した空間。住まい全体と自然に調和するよう、無垢材のレッドオークを使用したキッチンをオーダーしました。設備機器も充実させて、家事ストレスも軽減。キッチンに立つとワンフロア全体が見渡せるので、子供たちの様子を見ながら料理ができるのも便利です。

大きなダイニングの横には、子供たちのためのスタディコーナーを配置。造作の壁面カウンターに並行するように、収納家具を配置しました。ここには、学校関連の本やノート、書類などを収納。ダイニングやリビングが散らかることがなく、子供たちも気がねなく過ごせます。

リビングや小上がりの畳スペース。床レベルを一段上げたことで、リビングで過ごす人とダイニングチェアに座る人の目線を揃えています。ひと続きのLDKの床にレベル差をつけることで、用途ごとの居場所が生まれました。

家族の変化や子供の成長に合わせて
自在に変えられるワンフロアプラン

自宅棟の2階は、間仕切りのないワンフロアのプラン。子供の成長やライフスタイルの変化に応じ空間の仕切りを変え、間取りを生活に合わせて変化できるようにしています。日中は子供の遊び場として使われることが多く、夜は寝室として活用。将来的には壁で仕切り、用途に応じて最大3部屋にまで変化させることができます。

ダイニング上の吹き抜けがそのまま2階へとつながっているので、家じゅうどこにいても家族の気配が感じられるのもうれしいポイント。4面採光を確保したので日中はふんだんに光がさし込み、風が吹抜けや階段ホールを伝わって1階へと抜けていきます。窓からの採光があまり望めない1階も、2階からやわらかな光と風が入り、気持ちよく暮らせるスペースとなりました。2階バルコニーは「空見デッキ」と名づけ、夜空を楽しめるスペースとして楽しんでいます。

表情の異なる3つの庭を配し
常に外の気配を感じられる住まいに

自宅棟と事務所棟の間には通り土間を配置。悪天候でも行き来しやすい住まいとなりました。さらに、北・東・南の3カ所に庭を配し、それぞれ表情が異なる3つの庭と室内空間をつなげています。豊かな植栽で、隣接する住宅や隣家や住宅からの視線をさりげなくシャットアウト。雨水を利用した水流が庭をチョロチョロと抜けて、まるで小川が流れているかのようなサウンドも提供しています。夏は打ち水効果で、建物周辺の気温を下げるのにも役立ちます。

いちばん大きな開口は東にあり、夜明け前から朝日が入ってくるひと時は、住まいをドラマティックに演出。また偏西風が吹く地域なのですが、その風が通るように間取りを工夫してもらえたのは、地元工務店ならではの家づくりだと思います。パッシブデザインと断熱性の高い建物の組み合わせで、エアコンの使用は必要最低限で済むほど。耐久性や使い勝手など総合的に快適で、納得のいく住まいになりました。

実例を紹介しながら、住まいづくりのアイデアを数多く取り上げた書籍はこちら 「心地よい暮らしの間取りとデザイン2022」 今回ご紹介した実例も掲載!
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