規模:木造2階建て
設計:OHASHI Architects
施工:Livearthリヴアース
第二の人生を豊かにするため
自然の多いエリアに建てた家。
外と内との境界線があいまいな住まいは
程よい明るさの光に満ちて
会話も、読書も、家事をするにも心地よい。
夫の定年を目前に控え、来るべき2人暮らしにフィットする家がほしいと、家づくりについてリサーチしていました。工務店に依頼したいと何軒か尋ねてみましたが、なかなかピンとくるものがなく、依頼先探しには時間がかかりましたね。
設計・施工を依頼したLivearthとの出会いは、新聞記事です。同社がコンセプトとしている高い断熱性や気密性、職人による丁寧な仕事などが気になり、見学会に足を運んでみることに。実際に手がけた家を拝見するなか、漆喰や大谷石といった自然素材を生かした上質な内装や、里山の風景と溶け合う庭づくりなど、すべてに一貫したデザイン性が感じられ、「終の住まいはここにお願いしたい」と依頼を決めました。直感的に進めた家づくりですが、周囲の景色と調和する住まいが完成して、非常に満足しています。
設計を担当した大橋利紀さんには、「コンパクトで開放的な住まいにしたい」とリクエスト。その結果生まれたのは、暮らしやすさを追求したシンプルな間取りです。1階には、LDKを中心にキッチンや浴室などの水まわりも配置。キッチンから洗濯機を置いた脱衣室へのアクセスもよく、家事動線がスムーズになりました。
ダインニングテーブルは、キッチンからテーブルへの配膳がスムーズになるように配置。ダークブラウンを基調とするキッチンに合わせて、ダークチェリーを素材にしたテーブルをオーダーしました。キッチンに立つと、このテーブル越しに窓の向こうの庭まで視線が抜けて、料理する時も気持ちよく過ごせます。リビングダイニングの床には、大谷石を採用。この床を外部空間と同じ高さの土間に仕上げたことで、外と内とが連続しているような、開放的な気持ちで過ごせるスペースになりました。
家を建てたのは、東南角地の敷地。第二の暮らしを見据え、畑が広がる閑静なエリアを選びました。自然の多い地域ではありますが、住宅密集地でもあり、購入した土地も住宅地ならではの縦長長方形の敷地。大橋さんはこの特徴を大いに生かし、北側に建物、南東側には東屋風のガレージと庭を配した、光が入りやすい建物配置を提案してくれました。
周囲の里山らしい景色を取り込むために、外構では外塀をあえて設けず、高低差のある植栽で境界をつくっています。リビングスペースの大開口はこの庭とつながっており、外との境界が限りなくあいまいに感じられる空間に。高い吹抜けのあるLDKには開口部から自然光が差し込み、壁に飾るアートも映えるギャラリーのような雰囲気です。
開放的な1階に対し、2階はプライベート性の高いプランを採用。ワークスペースとなるカウンターや、ソファつきのヌックなど、静かに過ごせるスペースがフロアのあちこちにあります。その日の気分で居場所を選べることができる、贅沢な住まいになりました。
なかでも夫がいちばん気に入っているのが、読書にぴったりな2階ヌック。近くには本棚も置いてあり、本を読みながらゆったりとくつろげます。また、2階のカウンターデスクは1階からの吹抜けに面しており、デスクに向かって作業をしていると外に視線が広がります。カウンターの近くに設置した小上がりも、ごろりと寝転がってくつろぐのにぴったりのスペースです。
2階には廊下がなく、廊下がわりにフリースペースを配置。寝室として使っているのは、吹抜けに面した多目的な空間です。ここに絵画を飾る前提で、あらかじめ壁や窓の配置を綿密にプランニング。入居後は、お気に入りのアート作品を飾っています。
周囲ののどかな風景に合わせ、外観は周辺に調和する和風モダンなデザインを採用。外壁の砂利+モルタルのかき落としが、味わい深い佇まいとなりました。塀を設けないオープンスタイルの外構は、植栽でさりげなく境界をアピール。外壁と植栽の相性もよく、緑の美しさがさらに際立ちます。切妻屋根のある大らかな家のそばで、木々が美しく育っています。
道路から室内へのアクセスは、リビングの床と大谷石を敷き詰めたアプローチを使います。屋根がついているので、雨天時も玄関まで塗れずに移動することが可能。縁側のような中間領域も室内と戸外をゆるやかにつなぎ、プライバシーをさりげなく守ってくれています。自分たちのスタイルでゆっくり過ごせる空間と、周囲とのコミュニケーションもスムーズになる外構で、まさに終の住処にふさわしい家になりました。
1階LDK。アートを飾る吹抜け空間は、ギャラリーのような雰囲気。
LDKの床は、外のアプローチと同じ大谷石を採用して連続感を演出。
対面式のキッチン。ダイニングテーブルは、ブラックチェリーを使った特注品。
2階ヌックがご主人のお気に入りの場所。読書をするのに最適なスペース。
読書やパソコン作業に最適なカウンター。疲れた時は小上がりにごろり。
塀のないオープンな住まい。植栽も美しく、街の景観とも違和感なくなじむ。
※この記事は個人の感想に基づいて制作しております。
写真:ToLoLo studio