規 模:木造2階建て
設 計:松本設計
施 工:江田建設
思い出の詰まった築60年超の住まいを
機能性や断熱性を上げるため
全面的にリフォームしました。
新旧が調和した温かみのある空間は
まさにリフォームならではの仕上がりです。
結婚を機に、祖父が暮らす築60年の家に移りました。10年間住むあいだに愛着を感じるようになり、祖父の他界を機にリフォームを考えるように。元々新しいものより時を経たものが好きなので、今ある建物を生かしつつ、不便なところを解消できればと思っていました。
リフォームについて何社か相談してみたものの、「築60年以上の家は何があるかわからない」と新築を進められてしまい、計画は難航。困っていたところ、「江田建設」と提携建築家の松本孝充さんが実際に家を見たうえで「建物は古いですが、頑丈な構造体を生かしてリフォームできますよ」と言ってくれたので、依頼を決めました。ヒアリングやプランの提案なども丁寧で、計画を進めるうちに信頼度がさらにアップ。リフォームを依頼して本当によかったと思っています。
元の家では夏は涼しく過ごせる反面、冬のすき間風と寒さに悩まされていたため、「暖かく、家族がのびのびと暮らせる家にしたい」とリクエスト。これに応え、「江田建設」からは柱や梁などの構造体はそのまま利用し、床・壁・屋根の全面的な断熱改修を提案されました。さらに、開口部には断熱性の高いサッシを採用。その結果、薪ストーブ1台で冬を越せるほど、暖かい家になりました。以前は家のなかでダウンジャケットを着ていたのに、今はTシャツ1枚で過ごせます。
また、東西に開口が偏っており、耐震性が低かったため、耐震性能の補強工事も実施。一部開口をふさぎ、南側には開口を新設してバランスをとりました。南からの光が差し込むようになり、空間全体が明るく、快適です。
細かく仕切られていた1階の間取りは、リビングダイニングと和室をひと続きにした広々とした空間に。土間仕様の独立型キッチンは寒さが厳しく、会話もしにくかったため、対面式のキッチンに改修しました。調理中もリビングダイニングをひと目で見渡すことができるので安心です。床は水や汚れに強いコルクタイルで仕上げたので、掃除もスムーズになりました。調理しやすいシステムキッチンにカウンターを組み合わせ、配膳も時短でできます。
室内は木目や漆喰の塗装を生かしたナチュラルな雰囲気。既存の古い窓ガラスはキッチンの食器棚やパントリーの扉に再利用して、古い箪笥をTVボードにリメイクしました。古い家が持つ温かみを生かした、リフォームならではのインテリアだと気に入っています。
2階は納戸として使われていたスペースを子ども室に変え、2つの和室も寝室として使える空間に改修しています。天井を高くすることで、天井裏に隠されていた小屋組みが見えるようになりました。ダイナミックに交差する梁の様子が印象的なので、これを生かすために上部を空けた仕切り壁を採用。空間にゆとりが生まれると同時に、別室にいる家族の気配も感じられる住まいとなりました。
急勾配だった階段は架け替え、空間になじむ木製階段に改修。勾配もゆるやかとなり、安心して使えます。新たに生まれた2階の階段室には図書コーナーを配置。余った木材を使いDIYで書棚をつくりました。
劣化が激しかった外壁には耐久性があり、メンテナンスしやすい焼スギを採用。印象ががらりと変わり、黒い外壁がモダンな印象です。屋根は雨もりなど目立った劣化がなかったため、既存の瓦屋根を生かしています。
また既存の開口部は木製サッシとアルミサッシが使用されていましたが、樹脂窓「EX」(LIXIL)に交換しました。冬期は室内でも氷点下となる程の寒さでしたが、断熱性が上がったことで室温も安定して、暖かく過ごせます。玄関扉も同様に、断熱性の高いタイプの製品と交換しました。
工事中は大工さんたちの仕事ぶりも素晴らしく、子どもたちは完成後もその時の様子を楽しそうに話しています。私たちの希望を聞いてもらいつつ、さまざまなアイディアをいただけたので、予想以上の仕上がりに大満足。「家に帰るとほっとする」という感覚を日々実感しています。
メンテナンスもしやすい焼スギ材を外壁に採用。経年変化も楽しみな住まいに。
曾祖父の代から使っていた家具に合わせ、1階リビングの窓の位置や大きさを決めました。
物づくりが得意な奥様が古い箪笥をリメイクしたTVボード。炎に癒される薪ストーブも、温もり感のあるインテリアにマッチしています。
食器棚やパントリーの扉は、2階部分の窓として使われていた建具を再利用。以前の住まいの面影が感じられます。
仕切り壁の上部を空けて、ダイナミックな梁を生かした空間に。
外と室内側の色が異なる樹脂窓「EW」(LIXIL)を採用。
※この記事は個人の感想に基づいて制作しております。
写真:嶋井紀博