海外からも憧れのスタイルとして根強い人気を誇る「和」。
和のある住まいは、癒しをもたらしてくれるだけでなく、
使われる素材も、日本の風土が育んだすぐれた機能性を宿しています。
現代の暮らしにふさわしい、スタイリッシュな和のデザインや、
カジュアルな取り入れ方を実例とともに紹介します。
リゾートのような極上空間を、
和のモチーフを使ってつくりたい!
実用も兼ねられる
キーアイテムがあれば教えて!
圧迫感を出さずに、
ほどよく視線を遮れる格子はどう?
お好みでどんな雰囲気にも
デザインできるよ
外から家を見た時に、
上品さと落ち着きを感じさせる
オススメの和の素材ってありマスか?
家の佇まいを印象付けるのは屋根!
伝統的な瓦を使って、
モダンにデザインしてみよう
日本が世界に誇る、数々の美しい集落。その風景を担ってきたのが、瓦です。
瓦の原材料は粘土で、釉薬をかけて焼いたり、燻して美しい銀色を出すなど、焼きものと同じように地域によってさまざまな個性があり、さらに断熱性・防火性・防水性・通気性・耐久性などすぐれた特徴をもっています。
瓦を使うと古風な佇まいになってしまうのでは……と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらの実例は日本建築のもつミニマリスティックなデザインを現代的に解釈したケース。
実際は2階建てですが、平屋のように重心の低い落ち着きのあるプロポーションに加え、水平のラインが印象的なコンクリートの塀や、余計な要素を削ぎ落としたデザインで、美しい和モダンの佇まいを生み出しています。
瓦にはさまざまな葺き方がありますが、ここでは一文字瓦葺きという、スッキリと見える葺き方を採用。
さらに瓦を全面的に使わずにあえて金属板と組み合わせることで、軽やかさを出しながら瓦の存在感を引き立てています。
内部の和室も、モダンデザインを踏襲しています。
縁のない畳や、組子(障子を構成する細い木のこと)の上に和紙を貼った太鼓貼りの障子などのディテールも、上質な和モダン空間をつくる参考にしたいですね。
家全体は今風のセンスのよい
空間にして
和のテイストを
うまく取り入れてみたいんデス
障子のような建具で
雰囲気を出すのが効果的!
若い世代にも
ぴったりなデザインにもできるのさ
伝統的な日本家屋風にするのではなく、ほどよく和の良さを取り入れたい。
そんな場合は、障子のような和の建具をポイント的に使うのがおすすめです。
障子は光をやわらかく拡散し、断熱性や通気性にすぐれた建具。
カーテンと異なりホコリの心配をしなくともよいので、おそうじの面でもうれしいところ。
そして組子のデザイン次第で、和にかたよりすぎないモダンな表情もつくれます。
こちらの実例は中古マンションのリフォームで、若い世代のライフスタイルにあうように、リフォーム前の無機質な空間を一新することをコンセプトに掲げました。
スタイリッシュなコンクリートの壁と、あたたかみのあるむくの床材に加えて、空間を特徴づけているのが障子です。
ここでは組子を一般的な四角いマス目にするのではなく、縦格子を用いることで洗練されたデザインを実現しました。
障子を閉めると目の前に白いスクリーンが広がるような、シンプルでありながらぬくもりのある印象に。
しっとりとした落ち着きを感じさせる、モダンで快適なリビングとなりました。
お昼寝スペースを
リビングにつくりたい!
気持ちよくごろりとくつろげる
アイデアを教えて
小上がりの畳スペースはどうだい?
琉球畳にすると洋のデザインにも
違和感なく溶け込むよ
畳は、世界に類をみない日本独自の床材です。
伝統的な畳はイグサという植物の茎を編み込んだもので、香りの良さやクッション性、調湿性や断熱性、遮音性などすぐれた機能をもっています。
こちらの実例は「どこでも昼寝ができる」居心地のよい家をコンセプトにしたマンションリフォームで、LDKの一角に畳敷きの小上がりを設けました。
畳は、半畳サイズを市松模様状に敷いた琉球畳を使用。
畳縁もないのでスッキリと見え、洋の空間にも違和感なくマッチします。
畳コーナーがあると、大人だけでなく、小さなお子さんのお昼寝やオムツ替えにも重宝します。
来客があれば、宿泊スペースとして使うことも可能。
こちらの実例のように小上がりにすると、下部を収納として有効利用できるだけでなく、ソファ代わりに腰を下ろすこともできて、使い方が広がります。
「和」には、日本人が長年育んできたさまざまな知恵が込められています。
適材適所で部分的に用いたり、現代らしい洗練されたデザインにアレンジするなど、
今の暮らしに活かすアイデアはたくさんあります。
素材の良さを活かして快適な住まいをつくることはもちろん、
モダンな空間づくりに役立てるなど、和のある暮らしをおおいに楽しんでみてください。
日本の住まいの伝統的なモチーフである格子。
京町家の情緒ある佇まいも、繊細な格子のデザインがあってこそ。
格子は美観を演出するだけでなく、ほどよく目隠しをしながら採光・通風を得られるメリットがあります。
この実例は、外観にこまやかなピッチで格子を設けた住まい。
夜になると屋内の光が繊細な格子を薄闇に浮き上がらせ、美しい影を描き出します。
そして玄関を入った先には、格子戸を備えた和室を配置しました。
格子戸は縦横に組んだメッシュのような軽やかなデザインに。
この格子戸の開け閉めで、和室を玄関ホールとつなげて広々と使ったり、来客を迎えるスペースとするなど、使い方は自由自在です。
こんな和室でおもてなしをされたら、リゾートホテルでも訪れているような気分になりますよね。
格子戸は襖や板戸と異なり、閉めても閉鎖的にならないので、玄関スペースが重苦しい雰囲気にならないという点でも効果を発揮します。
この実例では、外観は格子を縦使いに、和室では縦横に組んでいますが、格子は並べ方やその間隔・木材の太さなどで雰囲気がガラリと変わります。
どのくらいプライバシーを確保したいか、あるいは透け感を出したいかなど、実用性もあわせて考えてみましょう。