新旧の素材を組み合わせて
江戸期の茅葺き古民家を
再生

【日野町の古民家】滋賀県蒲生郡

家族構成:夫婦+子ども3人

構造:木造

規模:1階建て

延床面積:150.00㎡

設計:江角アトリエ 施工:有限会社ネヌケン

  • リフォーム

江戸期の古民家を、古民家再生の実績がある設計事務所と工務店でリフォームした住まい。既存の建材と新しい素材をミックスさせ、新しく生まれ変わりました。

自然と共存した古人に想いを馳せる暮らし

リフォーム前は天井裏にアライグマが住みつくほど、老朽化が進んでいた江戸期の茅葺き古民家。増改築を繰り返した結果、母屋への風通しが滞り、住環境が悪化していました。持ち主の孫に当たる施主は、一度は建て替えを検討したものの解体に踏みきれず、「どうにか直して住んでみたい」とリフォームを決意しました。

インターネットを駆使してたどり着いたのが、古民家再生に力を注ぐ「江角アトリエ」。丁寧な古民家解説に信頼感を覚え、滋賀と島根という距離もものともせず、設計を依頼することに。施工は古民家リフォームの実績が豊富で信頼のおける地元の工務店「ネヌケン」に依頼しました。

綿密な調査の後、屋根が落ちた蔵や腐食が激しい西の増築部は解体し、石場建ての母家のみを残すことに。住み心地を向上させるため、構造の歪みを補正し、母家の外周は筋交の壁で補強。外壁、屋根、床下に断熱材を入れ、安全で快適な住環境を確保しました。

暮らしの中心となるキッチンは重厚感あふれる梁とモダンなパーツが融合する空間。トップライトを設けることで古民家独特の暗さを払拭しています。田の字型の間取りは南側の2間を和室として残し、キッチンに近い北側の2間をフローリングに変更。囲炉裏を設け、食事もできるリビングとして機能させました。

歴史を受け継ぐ古民家は住まう人がこまめに修繕し、次世代までつないでいくことが前提。施主自らも内部の解体や床塗装で家づくりに参加し、古民家への理解と愛着を深めました。自然と共存して暮らしていた古人に想いを馳せながら、古民家での暮らしを満喫しています。

田の字間取りの北側の2間は、和モダンなリビングに。囲炉裏は使わない時は板でふたをし、座卓を置いて食卓に。

トップライトと腰高窓で光を取り込み、古民家の薄暗さを払拭したキッチン。ニュアンスのある4色タイルがモダンな表情をプラスしています。

造作のキッチンは壁付に配置し、アイアン×コンクリートの作業台を並列させ、ゆったりとした作業スペースを確保しました。

■土間

比較的状態のよかった土間は、既存の腰板や柱を残し、往年の面影を伝える空間に。高い天井には断熱材を入れ、床はモルタル塗り、壁は下塗りと珪藻土で古民家らしい趣を再現しました。

■リビング

奥の間から囲炉裏のリビングとキッチンを眺める。杉材の床は施主自ら塗装を施し、我が家への愛着を深めました。

■トップライト

勾配の屋根にトップライトを設置し、豊かな自然光をキッチンに取り込んでいます。古民家らしい陰影を残しつつ、快適性も担保しました。

■和室

4間あった和室のうちの2間を井草の香りが漂う和室として残しました。障子や板壁など既存の建具を活かし、心休まる和のしつらえに。

■玄関

オリジナルの建材を残しつつ、天井、壁、床の機能性を向上させました。新旧の技が融合し、堂々とした玄関に再生しました。

■外観

敷地にあった竹林を伐採し、西側の増築部や蔵を解体。通風と採光を確保した母家を新材で補強し、建物全体の強度を向上させました。

写真:①②以外 渡辺慎一

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