建物内部に柱や壁のない
開放的な一室居住空間。

住み手の個性を
生かす家

[木箱・阿佐ヶ谷66/100]東京都杉並区

LIXILメンバーズコンテスト2013

新築部門・地域最優秀賞受賞作品

家族構成:本人+お母様

構造:木造一方向ラーメン造「木箱212構法」

規模:地上2階建て

延床面積:126.03㎡

施工:株式会社 木箱組

設計:葛西潔建築設計事務所

  • 新築

独自に開発した木造一方向ラーメン造「木箱212構法」により、内部に柱や壁のない大空間を実現。豊かな都市生活が息づく開放的な住まいが生まれました。

南側の全面開口が導く内外の一体感と屋外のような心地よさ

大通りから一本入った静かな住宅街の角地に建っているのは、Yさんとお母様が同居する二世帯住宅。通りを隔てて公園があり、その緑と連続するかのように、黒のガルバリウム鋼板と木塀が奏でる外観や枕木、植栽が緩やかにつながっています。

この家を手掛けたのは木箱組。建築家でもある葛西潔社長が独自に開発した「木箱212構法」の施工を手掛ける工務店です。

Yさんはカメラが趣味。以前は、近隣の築30年のマンションでお母様と愛犬と暮らしていましたが、細長いマンションの部屋には、光が入らず、撮影した作品のプリントを並べるのにも苦労が絶えず、お母様も暮らしの中でストレスを抱えていたといいます。「母も70代となり、双方にとって快適な家づくりを決意しました」とYさん。

そんなYさんの要望を受け、葛西社長が提案したのは、1階をお母様の居住空間とYさんのアトリエ、2階をYさんの住居とする独立型二世帯住宅でした。

2階南面のリビングダイニングでは天井高4mを確保。南面を全面開口として光や風、公園の桜の樹木など外部の自然を取り込みました。柱と柱の間には棚板を渡して収納に利用。また、キッチンと水回りを中央に配し、その周囲にパブリックスペースとプライベートスペースをゆるくゾーニングしました。

プランニングでは、Yさんたっての希望であった「木々に囲まれた雑木林のような空間」を敷地内のどこに設けるかがひとつの焦点に。「1年を通して外で快適に過ごせるのは、初夏と秋口ぐらい。それだけのために無理に庭やバルコニーの空間を捻出するのはもったいない。木箱212構法の家なら、大きな開口部を設けることができ、室内も構造材に妨げられず、広く確保できる。この開放的な大空間を存分に活用してほしいとご提案しました」と葛西社長。

LDK以外でも、浴室・洗面は間仕切りの要素を極力排除して広々と。木に映える白い浴槽と黒タイルでシックかつゴージャスに仕上げ、外のデッキに直結する動線も設けました。

土壌蓄熱式の床暖房を採用し、深夜電力を使って大きな温度差をつくらずに家全体を温め、24時間一定の温度を保ちます。また、北側にも必要十分な開口を設け、引き戸を開けることで南北の風の通り道を用意しました。さらには、屋上緑化で断熱と省エネルギー化も実現。

都市部に生まれた木箱は、温熱環境についても配慮した心地よい住まいになりました。

外壁には耐久性のあるガルバリウム鋼板を採用。木製ルーバーや植栽の緑とも調和する外観が街路空間に潤いを与えています。

1階は玄関ホールを中心に、お母様の部屋とYさんのアトリエとに分離。階段は構造から独立させ、将来の間取り変更時の架け替えも容易に。

建物の屋上はFRP防水を施した上に軽石とメンテナンスフリーの多肉植物を敷設して緑化。冷暖房の消費エネルギーを抑え、ヒートアイランド現象を抑制します。ロフトから天窓を介して屋上へ。

■玄関

午前中の明るい日差しを呼び込む細長いアプローチに、親世帯と子世帯、2つの玄関を持つY邸。枕木を敷き、植物を植え、街と住まいが緩やかにつながる外部空間となっています。

■LDK

室内側に置いた観葉植物が屋外のような開放感をもたらすLDK。

■リビング

天井高は4mを確保。構造のフレームだけで構成しているため全面開口が可能に。太陽光を最大限に取り入れた明るいリビングが実現。

■2階洋室

2階の洋室は収納とベッドスペース。両サイドに設けた高窓の引き戸を開けることで南北に風が通り抜ける仕組みに。グレーチングの床は、土壌蓄熱式床暖房の暖気を取り込むためのものです。

■バスルーム

床・壁に用いたタイルの質感に負けないよう、高級感のある人造大理石のグラスティN浴槽(LIXIL)を採用。上部に採光窓を設けて明るく開放的なサニタリー空間に仕上げました。

■トイレ・洗面

トイレと洗面、浴室を一体化することで面積以上の広がり感を演出。浴室からは直接デッキへ。

施工

株式会社 木箱組
東京都杉並区久我山3-26-5

「近年の都市の狭小住宅では、内部の壁を極力減らし、開放感や透明感、フレキシビリティを求める傾向があります」と葛西社長。そんな要望に応えるために考案されたのが、「木箱212構法」です。

規格部材の2×12(ツーバイトゥエルブ)材を用いて鳥居型の骨組みをつくり、トンネル状の構造体を形成する仕組みで、ワンルームの居住空間が実現し、将来の間取り変更などもしやすいというメリットがあります。

「この構法では構造体がそのまま意匠にもなる。最小限の構成要素で、生活スタイルに応じてお施主様がアレンジできるように余地を残す設計を心がけています」と葛西社長。

2000年に始動した木箱212構法の家も、間もなく80棟を数えようとしています。「100棟めを建設する頃には、この構法の標準化を完成したい」。葛西潔建築設計事務所と木箱組の取り組みはさらにクオリティを高めていきそうです。

掲載:2014年9月

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