[木箱・阿佐ヶ谷66/100]東京都杉並区
LIXILメンバーズコンテスト
新築部門・地域最優秀賞受賞作品
家族構成:本人+お母様
構造:木造一方向ラーメン造「木箱212構法」
規模:地上2階建て
延床面積:126.03㎡
施工:株式会社 木箱組
設計:葛西潔建築設計事務所
独自に開発した木造一方向ラーメン造「木箱212構法」により、内部に柱や壁のない大空間を実現。豊かな都市生活が息づく開放的な住まいが生まれました。
大通りから一本入った静かな住宅街の角地に建っているのは、Yさんとお母様が同居する二世帯住宅。通りを隔てて公園があり、その緑と連続するかのように、黒のガルバリウム鋼板と木塀が奏でる外観や枕木、植栽が緩やかにつながっています。
この家を手掛けたのは木箱組。建築家でもある葛西潔社長が独自に開発した「木箱212構法」の施工を手掛ける工務店です。
Yさんはカメラが趣味。以前は、近隣の築30年のマンションでお母様と愛犬と暮らしていましたが、細長いマンションの部屋には、光が入らず、撮影した作品のプリントを並べるのにも苦労が絶えず、お母様も暮らしの中でストレスを抱えていたといいます。「母も70代となり、双方にとって快適な家づくりを決意しました」とYさん。
そんなYさんの要望を受け、葛西社長が提案したのは、1階をお母様の居住空間とYさんのアトリエ、2階をYさんの住居とする独立型二世帯住宅でした。
2階南面のリビングダイニングでは天井高4mを確保。南面を全面開口として光や風、公園の桜の樹木など外部の自然を取り込みました。柱と柱の間には棚板を渡して収納に利用。また、キッチンと水回りを中央に配し、その周囲にパブリックスペースとプライベートスペースをゆるくゾーニングしました。
プランニングでは、Yさんたっての希望であった「木々に囲まれた雑木林のような空間」を敷地内のどこに設けるかがひとつの焦点に。「1年を通して外で快適に過ごせるのは、初夏と秋口ぐらい。それだけのために無理に庭やバルコニーの空間を捻出するのはもったいない。木箱212構法の家なら、大きな開口部を設けることができ、室内も構造材に妨げられず、広く確保できる。この開放的な大空間を存分に活用してほしいとご提案しました」と葛西社長。
LDK以外でも、浴室・洗面は間仕切りの要素を極力排除して広々と。木に映える白い浴槽と黒タイルでシックかつゴージャスに仕上げ、外のデッキに直結する動線も設けました。
土壌蓄熱式の床暖房を採用し、深夜電力を使って大きな温度差をつくらずに家全体を温め、24時間一定の温度を保ちます。また、北側にも必要十分な開口を設け、引き戸を開けることで南北の風の通り道を用意しました。さらには、屋上緑化で断熱と省エネルギー化も実現。
都市部に生まれた木箱は、温熱環境についても配慮した心地よい住まいになりました。