田園に並ぶ
木のブロックは
内外一体の生活空間

[羽ノ浦の家]徳島県那賀郡

LIXILメンバーズコンテスト

新築部門・大賞受賞作品

家族構成:夫婦+子供1人

構造:木造軸組工法

規模:平屋建て

延床面積:69.62㎡

施工:西野建設株式会社

設計:藤原・室 建築設計事務所

  • 新築

田んぼの真ん中に配置された複数の茶色の箱。築山の間から見え隠れするガラスの窓の向こうには環境と一体になった開放的な暮らしの場がありました。

四方から通気と採光が図られたパッシブな空間。コンパクトでも広々と

Yさん夫妻の間に家づくりの計画が持ち上がったとき、真っ先に思い浮かんだのが「開放的に暮らしたい」ということでした。「それまで住んでいた窓の少ない集合住宅の空間が窮屈に感じられたんです」(ご主人)。

ご主人のご実家が所有する田んぼを造成して敷地とすることに。Yさん夫妻が依頼先として選んだのは、西野建設でした。住宅部門を統括する平尾卓マネージャーとの打ち合わせを経て、設計は藤原・室 建築設計事務所に依頼することになりました。

そんな建築家との協働作業の末に提案されたのが、LDKを中心に4つのブロック化された空間が配置された平屋のプランでした。LDKはひと続きのワンルーム。北と西に子ども室、東に浴室・洗面室・トイレなどのサニタリー、南には寝室が配されており、その間には開口部が設けられました。

開口部は床から天井までの高さがあり、サッシ枠は躯体に埋め込まれているので、そこには仕切りがないかのように視界が確保されています。敷地の周囲は田んぼが広がり、外からの視線は前面道路以外は遠くからしか届かないため、カーテンやロールスクリーンなども設置されていません。「外の景色に誘われるのか、もうすぐ2歳になる子どももしょっちゅう外に飛び出していきます」とご主人は笑います。

内外の境界が曖昧になった室内では、まるで屋根付きの屋外広場でくつろいでいるかのような開放感を満喫することができます。

4つのブロックの間の開口部の前には、造成時に掘り出した土を築山状に積み上げ、砕石などで覆いました。残土の処分費が高くつくため、それならば外構に活用しようという工夫です。躯体周辺の4か所に設けられた築山は、ソリッドな外観の印象をほどよく引き立て、さらに内外の緩衝地帯としても有効に機能しています。「このあたりは風が強いので、その風除けとしても機能しています」とご主人。

わずか70㎡未満の床面積でありながら、屋外への広がりに満ちた「羽ノ浦の家」。コンパクトな設計により、家事動線もシンプルに、かつ短くなりました。建物の四方から採光・通風が図られており、室内空間も小さいため、冷暖房の効率は抜群。夏は風を通し、冬は日射の温もりを得て、必要最小限のエネルギーのみで快適な温熱環境を実現することができるようになりました。

暮らしのあらゆる場面で視界に四季の景色が収まります。Yさん夫妻の求めていた開放感とくつろぎは、敷地の可能性を十二分に引き出す住まいによってもたらされることになりました。

遠くまで開けた敷地環境にとけ込む平屋の外観。建物の回りに配された築山が、外からの視線と風をほどよく遮ります。

床・壁・天井がフラットに仕上げられ、スッキリとした印象に。

■玄関

玄関の収納の扉には取っ手を付けず、その存在さえ意識させない仕上がりに。限られた室内空間を広々とさせるための配慮です。

■リビング

各室の間には大きな開口部があり四方から光と風を取り込みます。

■ダイニング・キッチン

ダイニング、キッチンもひと続きに。床はナラ、壁は杉で仕上げられました。田園風景と木質感あふれる内装が調和します。

■子ども室

リビングに隣接した子ども室。将来は3畳ずつに分割することも可能です。

■サニタリー

洗面室の戸はリビング側ではなく、その内側に設置。リビング壁面をフラットにするための配慮です。吊り戸にして床もひと続きに。

■デザインの工夫

開口部のサッシは外枠を隠すように天井に収められました。枠の存在感を消すことで内外の一体感を高めています。

メニュー
ページトップへ