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ホーム > 暮らしの役立ち情報 > 著名人が語る「私のこだわり空間」 > 古さも不便さも愛おしい昭和の家 フードコーディネーター 祐成二葉
著名人が語る「私のこだわり空間」34


古さも不便さも愛おしい昭和の家

どこにいても帰りたくなる場所

フードコーディネーターとして多くのレシピブックを出版し、後進の指導にも力を注ぐ祐成二葉さん。築40年以上の建物に手を加えたお住まいは、懐かしさと新しさが渾然一体…どこにいても帰りたくなる場所です。
祐成二葉
壁を取り払い、天井を抜いた1階リビング。柱や梁が白い壁に映えて明るく優しい雰囲気。ソファでくつろぐのは愛犬のマロン(右)とグラッセ(左)。
家でも物でも、永く大切に使い込んで味わいが出たものが大好き。古い物の魅力を生かし、自分で手を入れて暮らすのは楽しいですね。

築41年に一目ぼれ。
古さを生かして快適に。

都心で築40年以上の日本家屋にお住まいと聞けば、ちょっと興味をそそられます。ビジネス街の喧騒から離れた仲通りの奥に、祐成家はありました。

門を入ると、丁寧に手入れされた庭。庭木と庭石、石灯籠が落ち着いた雰囲気です。玄関へのアプローチは洗い出しの石畳。蹲*などもしつらえられて、まるで親戚のおばあちゃんの家に来たような懐かしさです。
*蹲(つくばい) 茶室の庭先に低く据え付けた、手を洗う水を入れておく鉢。)

家の年齢より若い祐成さんが、愛犬のグラッセ嬢と一緒に、笑顔で出迎えてくださいました。

祐成さんに導かれて入った玄関も、たたきの凝ったタイル敷きやゲタ箱の形など、昭和の香りがいっぱいの懐かしい造り。でも不思議なことに、これほど古いお宅なのに、外観を見たときも中に入ったときも、古ぼけた感じがしないのです。そしてリビングに通されると、そこは大きなワンルーム。日本家屋なら小間がいくつもある構造…という先入観は見事に裏切られました。

*

「永い時間使い込んで独特の風合いや色に変わったり味わいが出てきたものが大好き」という祐成さんが、この家と出会ったのは数年前。仕事場から程近いこの場所を通りかかった折「こんな家に住みたい」と一目ぼれ。そして2年前に念願かなって購入しました。

でも、購入時に築41年の割には状態が良かったとはいうものの、実際に住むとなれば、設備の老朽化もあり、リフォームしなければなりません。

かくして1ヵ月にもわたる工事を経て、「大好きな海外旅行に行っても帰りたくなる、どんなに快適なホテルよりぐっすり眠れる」そんな家が完成したのです。

引き戸ガラス 祐成二葉
浴室へ続く引き戸のガラスは、最近では珍しくなったツタ柄装飾の型板ガラス。

門 祐成二葉
門を開けると手入れの行き届いた庭が。四季折々に花や植木が楽しめる。



家は暮らしの基本だから、費用をかけても思い通りの空間に。
階段 祐成二葉
階段下の壁の地窓は、採光や通風など、快適で機能的。現代にも取り入れたい日本家屋の美点。

古さだけにとらわれず
新しさや機能性もプラス

祐成さん宅のリフォームのコンセプトは、柱や梁、窓枠や建具などを生かして木造の雰囲気を残すこと。そのためにも、まず専門家に依頼して、天井に耐震補強をしました。

そして1階は壁を取り払い、ライフスタイルと強度を考えて床をすべてフローリングに。柱はやすりをかけて、木肌本来の色と滑らかな手触りに整えました。柱のほぞ穴には、小物を吊るしたり花入れを掛けたり…まるで柱に等間隔に施したデザインのように見えてくるから不思議です。木や竹、籐、皮革など天然素材を使った、お気に入りのアンティークな家具を入れ、壁は白くして、照明は天井から下がった白熱電球。陽だまりのような暖かさがいっぱいの空間になりました。

老朽化がひどかった台所は、吊り戸棚を残して、新しいキッチンセットを入れて機能的に。階段裏にあった床下収納は、はしごで上り下りするユニークな書庫に。そしてリビングの壁面には、押入れだった部分全体を引き出し収納にリフォームし、仕事柄と趣味の両方で増えてしまった大好きな食器類を収納しています。固定観念にとらわれない収納術は、お見事! 2階は床の間もある本格的な和室。琉球畳にして床暖房を設置。ゴロ寝したりのんびりくつろげる落ち着いた空間になりました。

書庫 祐成二葉
もとは床下収納だった場所をこんなにユニークで楽しい書庫にリフォーム。
階段 祐成二葉
2階へ続くオープン階段。踏み板の間から、階段裏の書庫が見える。

不便を楽しむことで
暮らしに愛着がわく

一般的に、新築した方が手間もコストも少なくて済むと言われるほど、古い家のリフォームにはかなりの労力と費用が必要です。

余計なお世話とは思いつつ、その点を尋ねてみると「ええ、古い家を生かしながらあちこち手を入れるのは本当に費用がかさみますよ。それに、不便なこともいっぱい」とニッコリ。

たとえば現代の高気密住宅と違って、冬はエアコンとストーブの両方が必要なくらい寒いとか、収納スペースが少なかったり、家電や照明器具の配線がむき出しになってしまうとか。

「でも、その不便さを楽しんだり、工夫やアイデアで素敵なインテリアに変えたり。それが楽しくて暮らしに愛着がわきますね」

実は祐成さんが子供の頃、ご両親は、当時珍しかった吹き抜け構造を気に入り即建築家に家の改築を依頼したり、アイデアがあると自分で造作したり、部屋の模様替えも頻繁にしていたそうです。

「両親はそういう暮らし方をとても楽しんでいて、洋服や持ち物より家にお金をかけよう、家という空間はそれくらい大切だと常々話していました」 そのご両親が現在住んでいるのも、イギリス人建築家が建てたという古い洋館だそう。どうやら「古い家を生かす力」は祐成家に受け継がれるDNAのようです。

でも、そのDNAを持ち合わせない人間にも「こんな住まいで暮らせたら」と感じさせてくれる魅力的なお宅でした。

玄関 祐成二葉
細長い陶器タイルを敷き詰めた玄関たたきも、玄関外の石畳も建築当時のまま。

キッチン 祐成二葉
新しいキッチンセットが台所のレトロな雰囲気にも不思議とマッチ。


和室 祐成二葉
2階の和室。琉球畳、床の間、雪見障子、卓袱台…昔の室礼がかえって新鮮。


フードコーディネーター 祐成二葉さん
ドイツ国立マイスター校卒業。5年間のヨーロッパ留学を経て、1988年「祐成陽子クッキングアートセミナー」のメイン講師に就任。後進を育成する一方、出版を中心に料理制作、テーブルコーディネートを数多く手がけ、初心者向けの基本料理レシピから、プロ向けのケーキデザインまで高い評価を得ている。最近ではLOHASな生活術を紹介し、インテリアや収納の分野でも活躍している。


リビング 祐成二葉 大空間を自由に使うライフスタイルを、古い日本家屋でも実現できることに驚かされます。古いものの美しさを現代に甦らせたのは、大胆に手を入れながら繊細にこだわる、そのバランスでしょう。不便を楽しみながら新しい機能性も取り入れる…。ハイテクを駆使して快適を追及する現代の住宅は、少し急ぎすぎているのかもしれません。


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