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ホーム > 暮らしの役立ち情報 > 著名人が語る「私のこだわり空間」 > スローライフを紡ぐ住まい ファッションデザイナー 中野裕通
著名人が語る「私のこだわり空間」26
スローライフ ヒロミチ ナカノ

スローライフを紡ぐ住まい

本来の自分を育むゆとりある私空間 ファションデザイナー 中野裕通さん

世界的に活躍するファッションデザイナーの中野裕通さん。和が香るハイセンスな自宅は私的時間の流れもおおらかです。
スローライフ ヒロミチ ナカノ
3階から張り出たテラスは、贅沢な広さ。ウッドデッキとタイルのコンビ床にもセンスが光る。家具はイギリスのアンティークで、チェアは自ら赤くペイント。
ここのテラスでは、休日や夏の夜、家族とゆったり食事を楽しみます。この下はバスルーム。星を眺めながらの入浴も、心癒されます。

「遠くには海が見えて、すぐそこは山でしょう。この景色に惹かれて、ここで暮らし始めました」

大磯の小高い山の中腹、居住区の最上部に位置する中野さんのお宅からは「快晴の日は、大島や伊豆半島も見渡せます」とのこと。

茅ヶ崎の平地で暮らしていた中野さんが、ここに新居を構えて一年。各季節を体験したところです。

「まわりの山は落葉樹なので、新緑から紅葉、枯葉まで、それぞれの表情が間近で味わえます。季節や時間ごとに変化する色や光、風や空気など、ここでは自然が肌で感じ取れますね」

また「大磯はほとんど開発されていないし、おそらく今後も過度に開発されることもないでしょう」というのが、「もともと歴史が感じられる場所が好き」と語る中野さんがこの土地を選んだ理由のひとつ。「実際に住んでみたら、神社が多いことに気づきました。伝統的な祭りも、たくさんあります。夜に御輿をかついで、山の急な崖を登る祭りもあってね、それはそれは迫力ですよ」と、すっかりここ大磯の環境が気に入ったご様子。

「東京での仕事は神経も使うし、ストレスも…。そこで自宅は東京と距離を置くことで、仕事と私生活を分けているんです」―「8時以降は仕事をしない」と決めているとか。そして、通勤電車の往復も、美術書を読む時間として有効に活用しているそうです。

「ここではスローライフ。朝晩、犬を連れて散歩するのも日課です」

散歩とはいえ、ふたつの山を頂上まで登るそうなので、これは本格的な運動。その他、湘南のテニスクラブにも通うなど、スポーツライフも謳歌しています。

スローライフ ヒロミチ ナカノ
3階のガラス壁の一部には、大正時代の椿模様のステンドグラスが。椿は中野さんの大好きな花であり、服のデザインモチーフにもしばしば登場する。

スローライフ ヒロミチ ナカノ
「歴史や文化を感じる古いものが好き」という中野さん。お母様の遺品である仙台箪笥をコレクション品の収納に、近江の帳場箪笥を食器棚に、など、時代ものの和箪笥をインテリアに愛用。写真は階段脇でチェストにした李朝箪笥のしつらい。



コレクションも家も、ペットも自分自身も、すべて日々“育てていくもの”です。
スローライフ ヒロミチ ナカノ
2階から3階へと続く階段。上に行くに従って和の香りが強くなる。突き当たりのガラス壁からは裏庭の景色が。
スローライフ ヒロミチ ナカノ
自然光あふれる2階のLDKは、家族の憩いの場。入り口の格子戸も縦線を強調した透かしタイプで、ヌケを表現。

「年齢を重ねるとともに、自宅で過ごす時間がどんどん長くなりますね」―若い時代は仕事一筋で満足できても、キャリアも地位も実証された世代になると、私的なことに時間を費やす気持ちのゆとりも出てくるもの。改めて自宅を見直す機会が訪れます。

中野さんが新居を建てるにあたり、目指したのは「自分の好きなものでまとめること」。自らイメージ画を描いたという家の構造は、1階は鉄筋コンクリートで基礎を固め、2階〜3階に向かうに従って木造部分が増した、端正な和風モダン建築といった印象です。

「とにかくヌケの良さを大切にしたかったんです。そこで、抜けていく表現法として縦線を多く取り入れました」というデザインは、凛としていて、確かに気がスッと軽く清々とする感じを覚えます。

「予想以上に光が入る家になりましたね。都会なら『見られてイヤ』と落ち着かないかもしれませんが、立地条件上、開放感に満ちた家となりました。本当は、縦線をもっと入れるつもりでしたが、予算的に難しくて…。今、無理するより、最終的に完成形となれば、その方が楽しいと判断しました」

「コンクリート建築による“造りあがったときがフィニッシュ”という家は、味気なく興味が湧きません」という中野さん。

「この家は現在がスタート。家も“住みながら育てていくもの”。木造は滅びゆく部分もあると同時に、そこに美しさも感じます」



時空を越えたさまざまなコレクションを好きに飾っています。

中野さんの生み出すファッションは、インパクトのある色使いとグラフィカルな模様が特徴。そうした遊び心に富んだおしゃれのエスプリは、自宅を飾るコレクションにも見られます。古くは弥生時代の土器をはじめ、奈良や平安時代から現代までの陶磁器や仏像、ヨーロッパやアジアのアンティーク、現代作家のポップアートなどなど、私的美術館を思わせるほどの充実ぶり。そして、そのひとつひとつが、中野さんの審美眼を象徴する“よきもの”です。

「骨董は文明にも触れられ、自分の目も育ちますね。一方、ポップアートの斬新な感覚にも惹かれます。そして、それらをひとつの世界観だけでまとめず、空間を共有することで各々の作品も引き立ち、面白味も深まります」

値打ち品も多々ありますが、決して“これ見よがし”でないのは、さりげない飾り方によるもの。

家の内装しかり、主張のあるディテールを合わせつつ、全体的に調和のとれた一世界を創りあげるセンスは、さすがです。

スローライフ ヒロミチ ナカノ
趣味のアートで彩られた中野さんの書斎。右奥の棚にはミッキーマウスのコレクションも。

スローライフ ヒロミチ ナカノ
玄関脇の書庫には美術書も多々。ドアのガラスはフランス製で、波状模様が美しい。

スローライフ ヒロミチ ナカノ
階段と書斎を隔てる引き戸には、京都「唐長」のふすま紙をあしらって。2種の模様を配したところが中野さん流。
スローライフ ヒロミチ ナカノ
ランプシェードは、大正時代のもので、手作りガラスによる独特の温かみに味わいが漂う。
ファションデザイナー 中野裕通さん
1951年、宮城県生まれ。84年、現サンエー・インターナショナルにて「HIROMICHI NAKANO」ブランドを設立し、東京コレクションに初参加。90年に独立し、91年にヒロミチ・ナカノ・デザインオフィスを設立する。遊び心のある独特のスタイルは、東京コレクションおよびパリコレクションで、毎シーズン評判。また、和装から日用雑貨までライセンス商品も数多く手掛けるほか、映画評論家として執筆するなど、多岐にわたって活躍中。
スローライフ ヒロミチ ナカノ


スローライフ ヒロミチ ナカノ 3階の階段上より、家内部を臨む。ガラス、木、しっくい壁で構成された吹き抜け状の建物は、光にあふれ、風通しも抜群。和とモダンが融合した、粋で落ち着きのある造りです。正面の庭には種々の椿を中心とした樹木を、裏庭には何百もの草花を植え、庭いじりも楽しんでいるとか。家のあちらこちらに置いた花器に、毎朝花を活けるのも、中野さんの日課のひとつ。


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