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著名人が語る「私のこだわり空間」17




景観デザイナー とよだみきさん

ガーデンデザイナーとして活躍し、最近は建築のデザインも手がけるとよだみきさん。景観デザイナーとしての面目躍如たる軽井沢の自邸は、まさに景色の中に飛び込んでいく家──。
景観デザイナー とよだみきさん 1986年、慶応義塾大学経済学部を卒業後、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校に留学。帰国後、1990年からガーデンデザイナーとして活動を開始する。株式会社オフィストヨダ代表。著書に『ガーデンデザイン・レッスン』『ガーデン&アーキテクチャーデザイン』(以上講談社)、ビデオに「とよだみきのニュースタイルガーデン」(全3巻、デジタルメディアラボ製作)など。
景色の中に飛び出していくようなウッドデッキで。地面との高低差は約10メートル。前方にははるか妙義山まで見渡せ、冬は一面銀世界に。
ガーデンデザイナーから景観デザイナーへ。とよだみきさんは現在、庭やエクステリアだけでなく、建築を含めた住空間全体のデザイナーとして活躍しています。普段は東京・神奈川を拠点に仕事をし、週末などには軽井沢の自邸へ。そこは、設計からインテリア家具のデザインまですべてご自身が手がけた「実験の家」でもあります。

旧軽井沢の別荘地を抜け、さらに山道を登った先にあるとよだ邸。玄関を開けると、いきなり壮大な眺望がひろがります。

「家はすべて景色を優先してデザインしました。リビングとダイニングはひと続きの部屋ですが、目線によってデッキ幅を変えています。ソファに座ると目線が低くなるので、前のデッキはできるだけ小さくし、人が通れるだけの幅に。デッキを広げてしまうと下のせっかくの樹木が隠れてしまうから。一方、ダイニングは椅子に座り視線が上がるので、多少デッキを広げても景色がさえぎられることはありません。窓を開放すれば、たとえダイニングに座っていても外にいるような開放感です」

ソファもダイニングの椅子も座り心地満点ですが、とよださんは1日の大半を外のデッキで過ごします。とにかく外が大好き。

「不思議と子どもの頃の写真に室内で撮ったものがほとんどない。庭で遊んでいる写真か、テラスでおやつを食べている写真(笑)。家族とおせち料理をテラスで食べた記憶もあります。季節に関係なく、私にとって外という空間は、住まう空間なんです」

庭の木々や鳥の声を当たりまえのように背景にしながら過ごした家族との楽しい時間。景観デザイナーへの道は、思えばそこがスタート地点でした。
最近は別荘としてでなく住まいを軽井沢に、という人も増えてきたとか。そんなお客様との打ち合わせもこの自邸で。「図面を書いていると時を忘れます」。

玄関を開けたところ。「限られたスペースを広く使いたかったので、玄関のたたきや玄関ホールは省略しました」。床暖房が入り、氷点下10℃以下の日もある軽井沢の冬も快適です。

ベッドルーム。両サイドの窓を天井まで切ることで広さを感じさせ、白い壁が面として際立つ工夫。「夕べは窓の外にキジもいました」。

洗面室には前面に鏡をはり、ドライヤーをかけながらも後ろの山並みが見えるように。

とよださんの趣味は競技スキー、カントリーウエスタン。忙しくても時間をつくって滑り、ライブに参加。「デザインは1人でする仕事なので、仲間と過ごす時間は貴重です」。
しかし、とよださんが景観デザイナーという天職と出会うまでには、しばらく時間がかかりました。大学で経済を学んだ後、ご本人いわく「さして目標のないまま」アメリカ留学を経て帰国。グリーンコーディネーターだったお母様の仕事を手伝ううちに、いつの間にかガーデンデザイナーとしてTVや雑誌で注目されるようになります。“人気ガーデンデザイナー”と呼ばれ、『スモールガーデン』(講談社)など著書もヒットしますが、3冊目の著書『ガーデンデザインレッスン』、4冊目の『ガーデン&アーキテクチャーデザイン』(P5参照)では、景観デザイナーと肩書きを改めました。

「ガーデニングという言葉があまり好きではない。日本には美しい風景があるのに、それとは無関係にどこかヨーロッパのかわいらしい雰囲気を想像させる言葉ですよね。私は庭やエクステリアをデザインしながらも、景観ということを非常に意識していました。あるとき庭だけではなく建物全体も含めて設計してほしいという依頼があって、それをきっかけに建築そのもののデザイン設計も仕事に加わるようになりました」

もともと学生の頃から日本の街並みに大きな不満を抱いていたそうです。たとえば、葦簀ではなくてピンクや黄色の派手な色の海の家。普段はひっそりとしている海岸がいきなり無秩序に彩られて、道路から見るとその裏側が見える醜さ。海から見ても海岸線が突然醜くなってしまう。どうして自分がどう見えているかということを、建物やその中の人は意識しないのだろう…と。

「住宅街を歩いていても文句ばっかり言っていましたね。先日、雑誌の企画で学生時代のボーイフレンドに会う機会があり、言われました。君を喫茶店に連れていくのは大変だった。コーヒーの味よりも空間に文句をつけるから、僕は神経を使ったよ、って(笑)」



とよださんのつくる庭には、バーベキュー炉やあずま屋風のサマーハウスなど、「長居できる」場所が設えてあります。それは、庭は「見る」場所ではなくて「出ていく」場所、というとよださんの庭づくりのコンセプトの表われ。

「もちろんお客様のオーダーがあってバーベキュー炉をつくるわけですが、庭に出ていくためのいろんな仕掛けをしますね。人間ってワガママだから、たとえば下がぬかるんでいると出るのがおっくうになるだろうから、すっと出ていけるようにテラスに石を貼るという風に。そうして庭に出ていくと、部屋から見ていたときには横からしか見えなかった枝を、下から見上げることができるかもしれない。木と交わることができますよね。ピクチャーウインドウから眺めていたときには平面だった景色が、立体的になる。庭の醍醐味がぜんぜん違いますよ、どんなに小さな庭でも。そういう空間をつくることによって、より自然の有り難みを感じることができるようになると思います」

景観が悪くなるのは自然の風景のせいじゃない。後から入っていく人間のせい。だから、家を建てたなら周囲には木々を植えて、街の景色に溶け込ませよう――。とよださんのデザインには、そんなメッセージが込められています。





寝室側からバスルームを見る。天井が斜めになっているのは、気持ちが景色の方へそのまま広がっていくように。白と茶色を基調としたシンプルな空間のなかで、オフィストヨダの庭園施工スタッフが積み上げた石積みの暖炉が、存在感を放っています。
リビングのソファに座って正面を見る。「ピクチャーウインドウのなかに収めるのはもったいないくらいの景色だったので、壁の白い角を上まで通して、窓枠が孤立しないようにしました」。夜はハイサイドライト(高窓)を通して星空が見えます。

ウッドデッキ側から建物を見る。窓を大きく切っただけのシンプルなつくりで、建物自体の存在感も極力なくすデザイン。星空や夜景を楽しむために照明も少なくし、暖炉の火やキャンドルを照明代わりに。
写真=林 雅之
photo=Masayuki Hayashi
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