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ホーム > 暮らしの役立ち情報 > 著名人が語る「私のこだわり空間」 > 「広がり感」のある家 ガーデナー 藤田禮子
著名人が語る「私のこだわり空間」13




ガーデナー 藤田禮子さん

名古屋市内でフラワーショップ「藤の花」を経営する
藤田禮子さん。子育てや家事を優先する暮らしの中で、
自分流の心地よい庭と住まいの世界を造り続けてきました。
ガーデナー 藤田禮子さん ガーデナー。『藤の花』オーナー。2男を育てるかたわら、自宅の庭で花や樹木を育てた経験をいかし、1984年、名古屋市内にフラワーショップをオープン。愛知県を中心に住宅などの庭づくりを行うほか、女性誌などでも活躍。鹿児島県生まれ。
南側のテラスで。表紙の写真を正面から見たところです。部屋の中に見える照明はお気に入りのドームのアンティーク。
名古屋市内にある花屋さん「藤の花」は、珍しい花や鉢植え、独特のアレンジメントで全国の花好きの間で密かに知られる存在です。オーナーの藤田禮子さんは、今もっとも人気のあるガーデナーの1人ですが、スタートは主婦業の合間の趣味からでした。ガーデナーとして活躍している人の多くが、造園の学校を出たり、英国でガーデニングを学んだりという経歴の持ち主のなかで、趣味の延長というのは異色です。

お店から車で約40分。藤田さんのご自宅は春日井市の市街地にあります。周囲は生活感のあるごく普通の住宅地。ところが、古い木戸を開け、1歩中に入ると空気が一変します。雑木からの木漏れ日、素朴な敷石、風で揺れる緑の向こうに見え隠れする漆喰の壁。

「もとは建て売りのプレハブ住宅なんですよ。今は社会人の息子が2人いるのですが、下の子が3ヵ月のときにここに移り住みました。高速のインターからも空港からも近くて便利だから、とりあえず…という気持ちでしたね。でも好きで次々に植えた樹木が育ってくると簡単には引っ越せなくなってしまって(笑)。3回にわたってリニューアルしながら、好きな家に近づけていきました」

まず、部屋のどこからも庭の緑が見えるように、窓をできるだけ大きくたくさんとりました。はずせる柱はすべて取り払い、広々した空間に。壁は漆喰にして、集めていたアンティークの照明や家具、古い扉などが引き立つように。

「当時、主人がよく笑っていましたね。どうして新しいものをわざわざ古いものにするんだ。古いものを新しくするのならわかるけど、って(笑)」

自生しているかのように自然で、かつ洗練された雰囲気の藤田さん流コンテナ。メキシコの銅の器と砂岩を組み合わせて。植物はカヤツリグサなど。

裏庭へつづくアプローチ。以前は枕木を敷きつめてありましたが、現在は砂岩を敷いて。右手前の石臼は藤田さんが子供の頃、お父様が川から運んできた石を削って造られたもの。

「ずっと自分流でやってきたので、教えるのは苦手です。これからも皆さんに真似されるような花や庭を提案していきたいですね」


室内から北側にある裏庭を眺める。左手の柱は、枕木をくり抜いて、鉄骨をおおったもの。その左手がキッチン。1階部分を北側に少し出し、天窓をつけて北の光が入るようにリニューアル。「子供が小さい頃は、裏庭でよく食事をしたものです」。
親戚からいただいた引越しの祝い金で、真っ先に家の周囲に高い塀を造ったという藤田さん。もともと敷地にあった山桜に加えて、マロニエ、ライラック、月桂樹など葉の美しい樹木を植えて、まるで森の中の別荘地にいるような世界をつくっていきました。

コンテナの寄植え、壁や木戸にからまる植物、水場、と見所がいっぱいの藤田さんのお庭ですが、中でも印象的なのが、アプローチ(P2右下写真)とその先につづく裏庭でしょう。入り口の木戸から北の端までたどりつくまで、いったいどれだけの魅力的な植物や味わいのある石や木の道具たちに目線を奪われてしまうことか。

「ただ、何の遮へい物もなく真っすぐに小道がつづいているより、植物や石のコンテナや壁などで、ちょっとずつ隠れている方が、あの先に何があるんだろうと想像力をかき立てられるようですね」

実際の距離よりも、ずっと奥行きを感じ、広がりも感じられる空間デザインです。

そして漆喰の壁をくぐると裏庭。石でつくった大テーブル、バーベキューの炉など、こちらは人の気配の感じられる庭になっています。

「私は南より北側の光が好きなんです。柔らかいし、気持ちが落ち着きますね。だからリニューアルしたときに北側の光が入るトップライトをつけました。植物の中にも、北向きの土地で育つものがたくさんありますし、たとえ南より花付きは悪くても葉の美しさを楽しめるものもありますから、まず1度植えてみるといいですよ。私も失敗しながらあちこち植え替えています(笑)」




藤田さんの使うコンテナは、銅や砂岩、木など。どれも時を経て味わいを増す素材で、メキシコやインドネシア、日本の古いものが中心です。中でも藤田さんとメキシコとは深い縁。飛行機が苦手で花屋を始めてからも海外旅行の経験がなかった藤田さんが、縁あって初めて出かけた国がメキシコでした。すっかり虜になり、以来、石の噴水や古い建材などの買い付けに毎年のように訪れています。

「何か好きなことを仕事にすれば…」というご主人のすすめで花屋を開いたのが18年前。週2回の仕入れの日には早朝4時半に起床し、自ら四駆のハンドルを握って市場へ向かう日々です。

「子供が学校に通う頃は、お弁当と朝食を作って出かけていました。家庭を優先させて欲しいというのが主人の希望でしたから。結果的に、他のガーデナーの方に比べると長い時間を自宅で過ごし、ここに緑があったら心地よいなぁ…などと思いながら暮らしたことが、独自の花の世界を築く上では良かったのかなと思っています」

朝、たっぷり水をやって潤った緑を眺めながら寛ぐのが、何よりの憩いの時という藤田さん。見かけによらず重労働の花仕事、庭仕事へのエネルギーを蓄えます。


南のテラスをアプローチ側から眺めたところ。室内と庭とが交わるこの場所は、建物、銅や鉄の花台、古道具、砂岩の敷石、壁をつたう植物(プミラ)が渾然一体となり、時空の奥行きと広がりを感じさせます。藤田さんご自身もお気に入りの眺め。
「朝、葉水をやってしっとりと潤った庭を眺めながらお茶を飲むのは、とても気分がいい」。家具や照明は、イギリス、日本の古いもの。

室内と庭が自然につながる設計。「白い花だけの庭にした時期もありますが、今は緑が好きですね。花屋なので、本当はお花を植えなきゃいけないんだけど(笑)」

長男は建築家に、次男は母親と同じ花の道へ。『藤の花』では、スタッフによるフラワーアレンジ教室も好評。
愛知県名古屋市千種区
東山通4丁目17-2
東山第一ビル1階
052-781-8885

写真=林 雅之
photo=Masayuki Hayashi
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