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女流建築家の提案プラン 01
女性建築家と家づくりを考えるシリーズ。 前号までの「ワガママ夢空間プラン」にかわり、今回から、「こだわり家プラン」をお届けします。 女性建築家の事例や提案の中から、住まいへのこだわりを「カタチ」にするヒントを探ってみましょう。 第1回目のこだわりテーマは「地域に開かれた家づくり」です。
現代は、隣人や地域との係わり合いも関心も非常に薄い時代です。さらに、「IT」の急速な広がりは、地球の果ての人々の動きは知らせても、自分の住む向こう三軒両隣の人たちの生活が奏でる喜びや悲しみはまったくわからないという社会を作り出しています。

ですから、家づくりは防犯第一に考える、というケースも少なくありません。しかしこんな時代だからこそ、あえて「地域に開かれた家」にこだわってみました。「少子高齢社会」が続くことや、地域全体の防犯のことを考えると、住まいは地域に開かれた形にし、ふだんのご近所付き合いの中で、世代や性別を超えた協力が、自然な形でできるようにしたいものです。
いつでも誰にでも開放
「都会の殺伐とした人間関係から逃れ、地域の人と親しく付き合える家づくりをしたい」という 建て主の希望から生まれた家です。 家の南側のコーナーに、屋根付き板張りのスペース、「井戸端会議室」を作りました。 水道のなかった時代、共用の井戸で洗い物をしながら、井戸端で地域の問題や各家庭での悩み事を話し合い、 みんなで解決したのが井戸端会議でした。玄関から呼び鈴を押してクツを脱いでの訪問は、 迎える方も訪ねる方も気を使います。ここ「井戸端会議室」は、近所の方誰にでも、 いつでも開放されているコーナーです。
傷んだときはみんなで修繕
この家の場合、井戸端会議室の床はすべて板張りです。風雨にさらされるので、時間と共に傷みますが、 そのときは地域の人たちで修繕しています。長期間留守にする場合は、内側サッシにクレセント(鍵)をかけておきます。  建て主の希望通り、ご近所の方々、お年寄りも子供も、ミケもポチもやってきます。 いつも話し声の絶えない住まいとなりました。(花設計工房/渡会 有子)
住まいを地域に開かれた形にする一つの方法は、 家の一部を地域の人が自由に使える場所にすることでしょう。 事例1の「井戸端会議室のある家」は、 地方の比較的敷地に余裕のある家の例ですが、住まいの立地条件に応じて、 ちょっとした立ち話のスペースや座ってコミュニケートできる場所を造ることは可能です。

例えば、通りに面した場所にテラスを造るなら、塀や植栽で囲ってしまう代わりに、 椅子とテーブルを置いてオープンカフェ風にしてはどうでしょう(図2)。 この場合は、通りからクツのまま入れるようにしたいものです。
[図2]
通りに面したテラスを
オープンカフェ風に

通常、通りに面したテラスは塀や植木で囲ってしまい居室の1つと考えるものですが、 この図は、ギリギリまでテラスを広げてクツのまま外から上がれる空間にした例です。 椅子とテーブルを置けば、ちょっとしたオープンカフェのようです。 ご近所の2階からの目があるので、防犯面においても、 塀や植栽で視線の届かない場所をつくってしまうよりも、むしろ安全です。
また、玄関アプローチを利用してベンチを置くのも手軽な方法です (図3)。間口の狭い家の場合は、門や塀を造らずにアコーデオンドアにして開けておくだけでも、 道路から少しだけ引っ込んだスペースが、往来する車を気にせずに立ち話のできる場所となります(図3・写真1)
[図3]
玄関アプローチを
コミュニケートの場に。

門や塀を造る代わりにアコーデオンドアにして、日中はずっと開けておきます。玄関アプローチを利用して、 ベンチを置いておけば散歩の途中の人がちょっと休んだり、回覧版を持ってきた人と話したりできます。 花や緑があれば、さほど親しくない人とも会話のきっかけとなることでしょう。
[図3・写真1]
明るい外観と引っ込みスペースが開放的な家
都会の狭小住宅の例です。黄色い明るい外観が開放的な雰囲気を与えています。 家の前は車が1台通ればギリギリとういう道路で、おちおち立ち話もしていられません。 ちょっと引っ込んだだけの階段下のスペースが、ご近所の人たちの立ち話スペースになっています。 2階の玄関横の窓は外とコミュニケートできるルーバー付きの窓になっていて、 この家の主婦はしばしば窓越しに下の立ち話に参加しています。
このような「ご近所の人たちに開かれた家」とは少し違った開かれ方というのもあります。 例えば、昼間一人暮らしの高齢者が家の中で孤立しないように、通りがかりの人がちょっとのぞいて安全を確認できる窓や、 お隣とコミュニケートのできる窓を設けて、地域の人たちみんなでこの高齢者をケアしているケースもあります。 これなども、「地域に開かれた家」の例といえるでしょう。

企業組合 花設計工房
1972年設立の東京パースを前身に、1988年、女性建築技術者の会を通して知り合った仲間たちにより、企業組合花設計工房設立。 以来、生活に視点を据えて、住宅設計を中心に大工さん、職人さんとのコミュニケーションを密にした現場監理を行っています。 「家は買うものではない」でメンバーの意見一致。住み手に合わせて創るものであるはずだと考えています
渡会有子(わたらいゆうこ)/1940年中国・青島生まれ。中央工学校建築設計科を経て、 NPO高齢社会をよくする会(ウェイWAI・21)代表。女性建築技術者の会会員。
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